2018年11月アーカイブ

 「ニッポンの出てくるチカラ!」で記したように、エリーゼのエンジンフードに財布を置いたまま発進し、秦野市内で落下させた事件で、僕は3人の善意ある方のおかげで、そのほとんどが僕の手元に戻ってきた。

 めでたし、めでたし。

 ...と言いたいところだが、ご覧いただいた方はまだ気になっている部分が残っているはずである。

 180SXのカギが出てきてないのでは?

 これである。

 そう、財布につけていた180SXのカギは、僕の家に現存する"最後のカギ"だったのである。それがまだ、出てきていない。

 走行30万kmを超えた僕の180SXのカギは、摩耗して折れた。走行が伸びることによるトラブルは、車体だけではなく、カギにもあるということはほとんどの方が見落としていると思う。

 そして僕はラスト1本をずっと使っていたのだった。

その、ラスト1本を、失くした。

 つまり、もう180SXを動かすことはできない、そう言うことだ。

 どうするんだろう?リビルド品とかで、エンジン、左右ドア、ハッチバックのカギ穴を全て交換するのだろうか。
 
 良く分からないが、「なんとかなる」という言われもない楽観の中にいた。エリーゼがあるので、車無し生活になるわけではない。それが大きい。エリーゼには大荷物は積めないが、その様なニーズに直面することはすぐにはない。

 まず、Suicaやキャッシュカード、免許証、保険証などを揃えることを優先させた。

 で、それが次々と済んだ頃、いよいよ180SXのカギの方に手を付けるか、という所で...

 どうなったと思いますか?

 何と、こんな時に特に気にも留めていなかった、どこに仕舞うでもなかった、数年前に摩耗して折れた180SXのカギが出てきたのである。

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 こんなことってあるか?!
 お前はまだ180SXを降りてはいけない、とでも導く神がいるのか、もしくは小人さんでも居るのか。
 
 キーの根元には4桁の番号が刻印されている(写真はそれが見えない面を撮っている)。まさか、これでキーを作れる...?ダメモトでチャレンジしてみよう、そう思って、日産部品販売に行ってみた。

 「ちょっと相談。車のキーって作れます?」
 「日産車の...ですよね?」

 エリーゼで来たのを見ていたらしい。もちろん日産車だと伝える。ただ、少々古いが。折れたキーも渡す。

 「車検証はありますか?」

 あるわけない。正確にはあるが、車の中で施錠されているので取れない。ただ、昔、車体番号は撮影していた。それで何とかならないか、確認してもらう。

 「このキーはすでに廃版になっております」

 180SXと刻印されたキーのことを言っているようだ。
 それはもとより望んでいない。180SXの純正キーにせよと言うほど欲深くはない。開きさえすれば刻印はZでもGT-Rでも構わない。いやむしろそれの方がふざけてて面白い。

 「承知しました。であれば、NISSANと書いたのがありますんで」

 却下されたらしい...。

 ちょっと分からなかったが、キー本体が何でもいいなら、この4桁の番号があれば、車体番号などはいらなかったのかもしれない。

 「納品まで2週間くらいかかります」

 ...と、言われていたが、結局は1週間で来た。

 値段は5000円ちょっと。2個セットでしか頼むことはできない。時間はかかったが、あっさり鍵が複製された。

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 ちなみに、ここでは身分を証明するものの提示は一切求められることはなかった。依頼する時も受ける時もだ。折れたカギを提示したからまぁ良いのか?これじゃぁ、瞬間的に誰かから鍵を借りてくれば、簡単に合い鍵作れちゃうぞ。現金もキャッシュカードも出て来るし、ニッポンはホントに平和だ。

 ま、イモビライザーとかはそうは行くまい。昔のクルマのほのぼのとした所だろう。

 と言うことで、僕の180SXのカギは新品になった。まだ当たりがついていないせいか、ちょっとギクシャクする。でもちゃんとドアも開いた。3週間ぶりくらいに車内に入る。

 キー奥まで挿そうとしてもなかなか入らず、引っ掛かり気味だし、回りもちょっとシブい。

 しかし。

 しばしの奮闘の後、キーが奥まで入った。まずは電源だけONにする。室内に、小さなライト類が灯る。どこからともなく、キーンという音が聞こえる。車内の機器類に電源が入ったことが分かる。

 そして。

 キーを奥までひねってエンジン始動!バッテリーは全く問題なく、クランキングをはじめ、すぐにエンジンに火が入る。普段の2倍くらいの長い時間、ガーっと言うコールドスタートの音がした。ちょっとヤバいかな、と思ったが、それ以後は問題なくアイドリングし始める。

 180SXはまた、廃車の危機から脱した。

 この寂しい駐車場で、ずっと僕を待っててくれた。うちの主人は、きっと自分を復活させてくれる、と。

 やっぱりこのクルマは凄い。

 いつもより長めにアイドリングする。3週間動かしていないが、大丈夫だろうか。

 ハンドル根元脇のスイッチを押し、リトラクタブルライトを上げる。

 ギアをバックに入れ、ゆっくりクラッチをつなぐと、各所軽く錆びていたのかシブい音を立ててタイヤが回り、車が動き始める。

 僕はいつも180SXが発進するとき、宇宙戦艦ヤマトが泥の中から主砲を上げ、かぶさった土を落としながら発進する様子を思い浮かべている。

 古い、もう動かないのではないか、と思うものが、予想に反して動き出すような、多分そんなところを重ね合ってしまうのだと思う。今回は、その想いが一層強かった。

 キィー、と言う音が少しの間聞こえていたが、動くとともに錆が落ちたのであろう、すぐにしなくなった。

 ゆっくりとクラッチを奥まで踏み、ローに入れる。全く問題なし。しばらくは低速で走行。回転数も2000回転くらいまでにしておく。ハッキリ言って、もう全く問題ない感じはしているが、念のため、もうしばらく「急」のつく操作はやめる。

 2~3kmそのような走行をしてから、ようやく少し正圧になるまでアクセルを踏んでみる。軽い加速感。これはもう、絶対に大丈夫だ。全開でも確実に行ける。

 次の直線で、全開にしてみる。いや、いいね!3500回転くらいからシュウィ~ン!と来る。音と加速がとても良い快感を与えてくれる。

 軽い。車体も軽いが、操作も軽い。ハンドルも、クラッチも、ブレーキもだ。絶対的な車体の軽さはエリーゼの方が上だが、良くも悪くも、操作感と言うか安定感含めて180SXの方が軽い。
 悪くも、と書いたのはどうもフワフワした感があるからだ。もう、ダンパーもオーバーホール時期に来ているせいもあるし、車高も高めにしてあるからダウンフォースもないのかもしれない。車体下は特にフラットではないが、それでも車高が下がれば少しは落ち着くんだろうが、車検を通したまま車高を下げていない。

 ただ、この加速感はエリーゼとは異なるタイプのものだ。絶対的な速度でいえば、エリーゼよりも180SXの方が速いんじゃないか、とさえ思う。

ホント良いクルマだよ、180SXは。

 今は逆に高くなってしまったのかな?でも、しばらくぶりに運転してもこうやってちゃんと動いてくれるし、情報もいっぱいあるし、日本で乗るなら、日本車は安心だな。

 こうやって、帰る場所があるからこそ、エリーゼにも安心して乗れるんだと思う。エリーゼだけだったら、やっぱりちょっと心配。車は趣味はもちろんだけど、生活インフラでもあるから、なくなっては困るのである。

 ということで、イモビライザーでない普通のカギなら、日産部品販売で簡単に作れる、ということが分かった。

 ところで、イモビライザーはどうなんだろう?今度試しに聞いてみようかな。
ニッポンの、出てくるチカラに期待しよう!

 エリーゼの後ろエンジンフードに財布を置いたまま発進し、途中で落としてほとんどの生活インフラを失った僕はそこに賭けることにした。

 しかし、それまで待てないのがSuica、すなわち定期券である。

 僕は片道2時間の長距離通勤者だ。定期がなければ片道1,000円以上かけて通勤せねばならない。現金もなくしたし、銀行から引き出すキャッシュカードもない。

 最寄り駅のみどりの窓口に行き、Suica定期券の再発行の手続きを確認すると、身分証が必要だと言う。身分証ね、身分証...

 ない!身分を証明するものがないぞ!

 こういうことなのである。その2つとも財布に入れてあったため、両方失くした。

 Suica再発行の書類の中に、どの身分証を提示されたかのチェック項目があって、そこにパスポートというものがあった。

 そうだ。パスポートがあった。昨年、たまたま仕事で香港と中国に行ったので、作ったのだ。しかし、あれがなかったら本当に委任状書いて親に戸籍謄本でも取って来なけりゃダメだったのかな?

 自宅からパスポートを取って来て、Suica再発行の手続きをする。窓口で新幹線の切符を買ったりするともらえる磁気切符みたいなものにSuica再発行の旨が記載されたものを渡される。

 これがあれば明日以降、JR東日本どこのみどりの窓口でも再発行可能とのこと。即日の再発行はできない。

 僕は、最寄り駅にはみどりの窓口の開いている時間には来れないので、勤務地の近くで再発行する。

 月曜日、窓口はまだ開いていないので仕方なく切符を買って会社まで行き、会社付近のみどりの窓口で再発行する。この時も身分証の提示を求められる。パスポートを一応持っていてよかった。再発行手数料とデポジット合わせて1,000円程度を支払う。これで、定期は復活した。

 次に遺失届を出しに行く。神奈川県内ならどこでもいいとのことだったので、仕事帰りに川崎に行こうと決めていた。一応事前に川崎警察署に受付時間などがあるか確認。交番などでもいいので、ない、とのこと。一応その時点での遺失物の状況を調べてくれる。やはりない。

 しかし、その後数時間してから川崎警察署から着信。秦野警察署に近いものがあるという。直接秦野警察署に連絡して欲しいとのこと。

 連絡してみると、楽天銀行のキャッシュカードと現金25,000円だけが届いているという。楽天銀行のキャッシュカードに僕の名前が刻印されていたため照合できたというわけだ。

 落ちていたのは秦野市内とのこと。そうすると、僕の予想に反し、PA内のカーブでも加速車線でも落ちることはなく、渋滞を避けて高速を降りるまでエンジンフード上に財布は乗っていた、ということである。

 財布本体はなかったが、一番出て来ないはずの現金が出てきたというのは驚きである。いかに日本人が真面目で正直者かが分かる。

 今、どなたかがどこの誰かも知らない僕と言う人のために、きっと困っているだろうと思ってわざわざ貴重な時間を割いて、交番まで届けて下さったのである。もしかしたら、警察署までバス代までかけてくれたかもしれない。

 ニッポンの出てくるチカラが、動き始めた。

 僕の財布は、マジックテープで留めるタイプの物なので、車から落下した瞬間に開いて中身が散乱した可能性は十分に考えられる。ネコババしても最も足跡が付きにくい現金が出て来たとあれば、僕の名前と照合できないだけで他の物も届いている可能性は高い。

 しかし、近隣で拾得された遺失物で僕が申告した物は未だ届いていないとのことだった。

 楽天銀行は僕がメインバンクにしている銀行だ。ここに殆どの資金を預け、セブンイレブンのATMから引き出して生活している。このキャッシュカードが戻れば現金を引き出せるようになる。

 僕は、翌日午後半休をもらい、電車で秦野警察署まで向かった。

 ビニール袋に入った現金2万5千円とキャッシュカード。幸い、カードに損傷はなさそうだ。遺失物届ここで提出。ちなみに財布に印鑑も入れていたので、書類作成時に捺したのは何と実印。身分証明はパスポート。まだ実印とパスポートを持ち歩かないといけない状態なのである。

 話は続く。

 さらに翌日の水曜日。財布と埼玉りそな銀行のキャッシュカードが別々に届いたという。僕は計3名の方に救われたというわけだ。

 ちなみに、3名すべての方がお礼などは辞退するということで連絡先の公開を拒否したとのこと。「いやいや、当たり前のことをした迄です、礼には及びません」と言うことか。

カッコイイ、カッコ良すぎるぞ、ニッポン!

 まぁ、どこぞの誰だかも知れない人からお礼とか貰ってもちょっとね...て言うのもあるんだろうけど...。

 でも、僕としてはきちんとお礼をして、「やっぱり良いことをして良かった」と思って欲しい、そして次もまた落とし物を拾ったら警察に届けるぞ!という気持ちになって欲しい、そう願うのである。せめて、あなたの拾ったものは無事落とし主の手元に帰りました、大変助かったと言っていましたよ、くらい伝わりはしないものだろうか。

 なんてことを考えるものである。

 さて、昨日行ったばかりでさすがにもう行けないので、現金書留で送ってもらうことにした。秦野警察署から取りに行けないため、送ってください、という旨の書類を送付してもらい、送料相当の切手を同封して返送。そしてついに帰って来たのがこれ。

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 こっちは徹底的に車で踏まれている。ひしゃげた500円玉。USBメモリが出てきたのも安心。もちろんバキバキに壊れていたが、個人情報なども入っていたので返って破壊されていた方が安心だ。

 180SXと家のカギを付けていたチャックの持ち手部分は根元からもげていた。落下した際か、踏まれる間にちぎれたのだろう。

 この状況下にあって、レザーマンの十徳ナイフ、Juiceはへこんでいたものの使用には問題なし。

 埼玉りそなのカードは失くす前から割れていたのを騙し騙し使っていたのでこれを機会に新しいものに作り直した。

 未だに出てきていないのは180SXと自宅のカギ、そして運転免許証と保険証、Tカード、ポンタカード、ヨドバシのポイントカード。

 運転免許証と保険証は再発行済み。自宅のカギがセットでないのはちょっと不安なので、こちらもシリンダー交換を実施。ポイントカードなどは個人情報も登録していて紐づいているので変更したりするんだろうけど、そういうのはこれから。

 それにしても、今回しみじみ思ったのは、やっぱり日本はスゴイ!と言うこと。ちゃんと出てくるんだもんね。警察に届ければ元の人に戻る、っていう仕組みが出来上がっているのが大きいのかな。

 公道では敵同士なんですが、今回警察の方には大変良くして頂きました。そして、愚かな僕の落し物を拾ってくださった皆様、心から御礼申し上げます。落とした物がきちんと元に戻る国、ニッポン。これからもそういう国でありたい。もちろん、僕も拾ったらおまわりさんに届けようと思います。
 先日のブログに書いた、NSXやらスーパーセヴンを借りた、あの夢のような日には、後日談があった。

僕は、財布を無くした。

 僕は、財布に全ての機能を集約していた。財布なので現金はもちろんだが、家の鍵、180SXの鍵、Suica、キャッシュカード、クレジットカード(全てデビット式)、免許証、保険証、印鑑、朱肉、各種ポイントカード等。他にもライターや携帯用のゴトク、レザーマンJuice、カラビナやロープなどのサバイバル系グッズなども入っており、超重要かつ超重量の財布に仕上がっていた。

 これ一つ失くしたらもう何もできない、というリスクはあるものの、逆にこの一つだけ管理しておけばOK。これがなければ、家を出るときにカギがかけられない。Suicaがなければ電車に乗れない。180SXにも乗れない。つまり、忘れれば行動できないので、すぐに失くしたことにも気づくようになっているのだ。

 リスクは知っているが、管理は楽。今回はこれで大打撃を受けたが、このシステムで助かったこともたくさんあった。

 しかし。エリーゼの鍵をここには付けていなかった。エリーゼの鍵は分厚いことに加え、防犯システムのON、OFFボタンが別体になっており、これらを財布に装着することができなかったのだ。

 と、なると、どういう事が起きるのか。財布を忘れた状態でも、エリーゼを駆ってどこにでも行けてしまうと言うことだ。

 そして、今回。それが、起きた。

 帰りにみんなと足柄PAで別れた。時間は19時頃だったと思う。

 1日遊んでかなり疲れていたので、東名中井PAで休憩。そこで僕は財布を持ってエリーゼを降り、トイレなどに行った後、エリーゼの後方に回って、眠気覚ましにストレッチなどを行っていた。持っていた財布は、リアのエンジンフードの上に置いていた。

 そして僕は財布をリアのエンジンフードに乗せたまま、エリーゼに乗り、車を発進させてしまったのだ。

 これが180SXであれば、鍵と財布が一体になっているのでエンジンをかけることはできない。しかし、エリーゼの鍵は財布と別体。動かすことができてしまったのだ。

 中井PAを出てすぐ、東名の混雑を避けて僕は秦野中井ICで一般道に降り、再び相模原ICから圏央道に乗った。そして埼玉県内に入り、狭山PAで休憩。そこで、財布がないことに気づく。

 エンジンフードに財布を置いた事実についてはその時は完全な無意識下の行動で、財布をどこで失くしたのか、思い出すのに相当の時間を要した。
 思い出してもそれにも強い確信は持てずにいた。心のどこかで、夜だから暗くて分からないだけで、明るい所で落ち着いて見たら、助手席の足元辺りに転がってるんじゃないか、なんて思ってみたりもした。

 とは言え、エンジンフードに置いたまま発進した可能性が最も高いとすれば、おそらくPAの駐車場エリアを脱したあたりの加速で振り落とされている可能性が高い。駐車場内を抜け、月当たりを右にカーブした辺りだ。その後左にカーブして加速車線に入る。40km/h制限が解除されたあたりで一気にアクセルを入れる。この辺りも可能性は高い。

 中井PAにある可能性が最も高い...!

 まずは、神奈川県警察本部に連絡。当然、落とした場所を聞かれる。もちろん、最も可能性の高いのは中井PAの出口付近だ。しかし、可能性で言えば、東京都内も、埼玉県内も有り得るから始末が悪い。

 その後、中井PAにも連絡。財布の落し物は届いていないという。

 なお、遺失届を出すなら、神奈川県内で落としたなら、どこでもいいから神奈川県内でなければならないとのこと。

 翌日は日曜日。すぐにでも中井PAに確認に行きたい気分だったが、サッカーの試合があった。180SXは乗れないのでエリーゼで行く。何と、180SXの鍵はあれが最後のカギ(ドラクエじゃないが)だったのだ。2本あったが、もう1本は走行20万kmくらいで摩耗して折れた。つまり、180SXを動かすための鍵は1本もなくなり、動かすことができない状態に陥ったのだ。

 出発前にエンジンフードを見てみる。そこには、エンジンフードに置いた財布が、右カーブの時に左後方に向けて放り出されたことを示すキズが、はっきりと付いていた。やはり、エンジンフードに置いていたのは確実だ。

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 試合は今年は慢性的な人不足で、この日も1名不足の10名で戦った。本稿の趣旨とは関係ないが、この日僕は1アシストという活躍を見せた。

 試合が終わって僕は逃げるように会場を去り、帰宅してさっとシャワーを浴びるや否や、昼も食わずにエリーゼに乗り、僕は中井PAに向けてエリーゼを走らせた。

 -まだ、落ちているかもしれない-

 疲労困憊の僕を支えていたのはこの、可能性である。

 駐車場エリアを抜けて突き当たった右カーブ。あそこに違いない。PAの最後の部分なので、人通りも少ない。放り出されて路肩の方に飛ばされていれば、まだ誰にも発見されていない可能性もあるのでは-

 幸い、財布の銘柄はブリーフィング、緑の迷彩柄だ。発見されにくい。

 PAに到着。そうと思われる場所をくまなく探す。かなり怪しい人になっていたが仕方ない。ない。加速車線の方まで範囲を広げるが、全く見当たらない。拾われて、中身の現金を抜かれて茂みに放り投げられているかもしれない。茂みの中などにも視線をやった。

 1時間ほど探してみるが、結局は、なかった。

 PAのスタッフにも問い合わせてみるが、やはり届いてもいない。

 万事休す-

 やはり、ダメか。僕は生活インフラのほとんどを失ったのだ。

 <つづく>

 
 先日、スーパーセヴンとNSXという対極にある車を乗り比べる、という機会に恵まれたので報告しておきたい。


 今回は、その企画第2弾と言ったところで、同じ「Fun2Drive」で今度はGT-RではなくNSXを借りた、ということなのだ。メンバーも昨年と同じ、会社のクルマ好きである。

 このメンバーはロードスターオーナーなど、兎に角クルマは自らの手でドライブするべき、と言う向きの集団なので、殊更GT-Rの評価は「ツマラナイ」というものに終始していた。(ちなみに僕は「あれはあれで凄い」と結構感動しており、それについては上記リンクを参照されたい)

 ということで、今回は、スーパーセヴンと対極にあるには違いないが、クルマは自らの手でドライブするという路線(もしくはスーパーカーとは2座ミッドシップエンジンであるという信念?)は外れていないNSXを借り出したということである。

 また、エリーゼとNSXで、ミッドシップ乗り比べ、と言う趣向もまた実現させている。実に楽しみだ。

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 ということで、NSXは91年式、初期型の3.0VTEC、280馬力で、コンピュータとマフラーが変更されていた。

 箱根とかは完全アウェイなので僕は良く知らないが、大観山という有名スポットまで自らのエリーゼをドライブし、上掲の写真を撮影後、まずはスーパーセヴンに乗った。このクルマは昨年もドライブしているが、とにかく、寒いのと怖いのとの記憶しかなかった。

 なぜ、怖いか。それは、車とドライバーとのコミュニケーションが成立しない、ということなのであった。

 昨年も書いたが、個体差だと信じたいが、ここで借りるスーパーセヴンは僕のエリーゼと異なり、インフォメーションにダイレクト感がない。スーパーセヴンとは、ダイレクト感の塊であり、それはロータスエリーゼ以上であり、それを楽しむ車ではなかったか。

 しかしこの個体は、ギア(が一番だと思う)を始め、クラッチ、レーキなどの操作系がとにかくわからない。目で見て、加速しているから、クラッチがつながっているんだとか、減速しているからブレーキが利いているんだとか、ほとんどが目からの情報だ。体で感じるインフォメーションが兎に角感知できない。

 ギアはどこに入っているか分からないし、クラッチはとんでもない量の遊びがある。手前10%はクタクタで、そこから先は少し重くなって、クラッチミートが始まるのは踏んで奥の97%くらいから始まる感じだ。

 メーターどれも同じような造りでどれがタコメーターでどれがスピードなのかもよくわからず、ウィンカーも単なるトグルスイッチでしかなく、自動で消えてくれる機能などない。ウィンカーを自ら消すということをしたことがないので、ほとんどのメンバーが出したウィンカーを消し忘れたまま走行しまくる、と言う状況が繰り返された。

 インフォメーションが悪いわりにやることが多く、さらに風は凄いし、石は飛んでくるし...、このクルマには本当に怖いし、寒いし、慣れない。

 ということで、話をNSXに移す。

 NSXは大学時代、1kmくらい運転したことがあるのみで、それ以来のドライブである。その時は、ホンダの狭山工場を見学に行ったのだが、S13シルビアで行ったところ、やっぱりホンダ車じゃないと色々面倒、ということになって、案内してくれる人がレジェンドとNSXを貸してくれた。マニュアル運転が慣れているのが僕、ということで借りてホンダ狭山工場までドライブした約1kmがその貴重な経験。
 その時は、もう借りた車だし、市街地ドライブだし、絶対に事故れないということで、本来の性能の2%くらいでしか走っていないと思う。その時の印象は「単なる高級車」というもので終わっていた。

 20年の時を経て、180SX、ロータスエリーゼという経験もした上でのNSXとの邂逅。

 で、20年ぶりのファーストインプレッションはやっぱり「単なる高級車」であることに何ら変わりはなかった。ちょっと硬めの本革シート、何の問題もなく効く快適なエアコン。クラッチミートの瞬間からトルクフルなエンジンの割には、全く静かな室内。足回りは必要な路面の様子を角の取れた振動に変換してドライバーに伝えたら、すぐさま収束した。

 この20年、ほとんどの時間を180SXと過ごし、マニュアル車の運転はこの180SXの作法が体の芯まで染みついている。最近ちょっとエリーゼとの時間が増えているが、あくまでも土台は180SXで得た作法だ。

 その唯一の作法でこのNA1というクルマに臨み、彼はその作法を受容した。もちろん僕は180SXの作法を用い、恐る恐る、彼に指示を与える。それに対する彼の反応は、僕の望み通りの物だった。

 すみません、僕、180SXって言うクルマしか運転したことがなくて...。NSXさんなんてクルマ、僕には合わないですよね、言ってください、変な運転してたら...。

 なんて、自信のない操作で入る僕に対し、彼-すなわちNSX-は、
 「180SXですか!だったら何にも変わらないですよ、180SXに乗ったつもりで操作して下さい!」
 NSXは、間違いなく、僕にそう伝えてきたのだ。180SXで得たドライブのスキルをそのままぶつけてきてくれ、と。

 あとはもう、彼との会話はトントン拍子だった。

 例えばカーブが迫って来た時、このくらいブレーキを踏んで、このくらいアクセルをあおって、このタイミングでギアを落としてクラッチをつなげばこのくらいのエンジンブレーキをかけながらカーブに侵入できるな、という感覚があって、そう操作すれば結果として期待した結果が得られた。180SXの時の感覚を何ら修正する必要はない。

 厳密には修正しているんだろうが、その自覚はない。感じたインフォメーションに合わせ、直感的に操作する。また期待通りの反応があるから、次の操作ができる。予想外のレスポンスはない。だからまた、次の操作に躊躇なく入れる...。この繰り返しであった。

 これを僕はコミュニケーションと呼びたいわけである。

 途中、椿ラインという狭い道もドライブしたが、リトラクタを上げて走れば、3ナンバーと言う慣れないサイズであるにもかかわらず、車幅感覚はこれまた180SXをドライブするときの感覚で問題ない。

 異なる事があるとすれば、例えば、エンジン音。これは180SX、そしてロータスエリーゼにもない類の高い音で、知らず知らずのうちにこの心地良い音と共に訪れる加速感を得たいという欲求に駆られ、それを繰り返してしまう。

 あとは、低回転からでも十分なトルク感。やっぱり180SXだと回転が上がるまでちょっと気持ちいい加速感が訪れるのを待たなければならないシーンでもNSXは必要な加速とパワー感を与えてくれる。

 と、言うことで、NSXは、「180SXで積み上げてきたものは間違いではなかった!」と感じさせてくれる。このクルマはどちらかと言うとドライバーを褒めて伸ばすタイプの車である。
 
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 途中、カー雑誌やビデオなどで有名な「金魚」と呼ばれるポイントで、エリーゼを撮影してもらった。

 再び芦ノ湖の方まで戻ってから再度スーパーセヴンへ。

 やっぱりわからない...。

 下手なのは分かっている。だから「それで良い」と言ってくれないのは良い。しかし、「それじゃダメだ」とは言ってくれないのか?

 外国人...否、宇宙人だ。NSXを褒めて伸ばすと言ったが、スーパーセヴンは宇宙人。次元が違いすぎる。

 一切のドライビングエイドはないから僕自身がドライブしていることには間違いないのだが、それさえ確認しないと不安になるような感覚である。しかし、車は間違いなく前に進んでいる。なぜだ?

 良く分からないのでまず3速だけで走る。ギアは変えたくない。4ならまだ良いが、2は嫌だ。停止は絶対に嫌だ。免許取りたてのころと同じ願いである。

 ヒールアンドトウはもちろんできない。だから、カーブが来るとブレーキだけになる。減速してからブレーキを離し、アクセルに足を置き直した後、回転を上げてギアを入れようとする。しかし2速が良く分からない。何度か2速のゲートを探しながらトライする。車は無情に惰性走行を継続。シフトチェンジのタイミングは完全に過ぎ去っている。もう、どのくらいの回転に上げて繋げば良いのか分からない。

 しばらくの空走の後、やっと2速に入った。クラッチを繋ぐが2速でもだいぶ低い回転になっている。そこから加速。そんな走りしかできない。

 しかし、このあたりの道を往復するうち、徐々に2速に入れることが苦でなくなってきた。この宇宙人との会話の糸口が少しずつ見えてきた。

 ヒールアンドトウをやってみよう。エリーゼも最初はできなかった。しかし、今は問題なくできる。セヴンでもできるはずだ。

 ペダル周りが異様に狭いこのような車の場合、ヒールというか、ブレーキは右足の親指の付け根当りで踏みながら、アクセルはと言うと、小指の付け根辺りの側面で、足を回転させるような感じで踏む。

 見つけた。

 ブレーキを踏みながらアクセルを踏んで回転を上げられれば...。2速に入れることについてはだいぶ出来るようになっている。

 できた!

 分かって来たぞ!

 ヒールアンドトウができるようになって、コーナー手前で2速に入れられるようになったら、もう早い。コーナー出口が見えたらアクセルを踏むだけだ。爆音と共にようやく加速感を味わえるようになった。

 気持ちいい!

 宇宙人だと思っていた相手が、ようやく少しこっちを向いてくれた気がした。

 前回はスーパーセヴンは全く分からないまま終わったが、今回は少し操れるようになれた。ただまぁ、僕の中ではこのクルマは一緒に暮らすクルマではないと言う気持ちに変わりはない。

 NSXは良いけど、税金とか多分色々高いんだろうな、と思うとエリーゼは実に程よい車だと思うし、180SXをドライブしてきてよかった、と本当に思う。結局1年前と同じ感想になってるけど。

 わずかの時間でも、こうして色々な車を乗り比べるのはとても貴重な経験だと思う。僕の場合は180SXだが、おそらく自分が運転してきた車はやっぱり良いんだ、と言う気持ちを再確認できるはずだ。

 今日あたりの180SX走行距離:307,608km

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