ゲリラ実験室MISSION9-2下から行けば間に合った?神様が与えたワンモッチャーンス!

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【基本タイム】

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「ハイオク......満タンだ......」

 「マンガと同じこと言うなよ。アホかと思われてるぜ。」
 「やっぱ、このセリフで行かなきゃダメだろ。」

 実際はこのような会話でやり取りされている。ゆみごん社長は女性ではあるが、このくらい言葉遣いが汚い。事実のみを読者に知らせるのが本研究所の責務であると認識するものであるが、女性であるゆみごん社長がこのような言葉遣いでは読者がドクターうるふの発した言葉と間違える恐れがあるため、女性らしいセリフに改ざんしてお届けしている。予めご了承願いたい。

 「この高速の時間を基本タイムとしよう。池谷先輩が渋滞に要した時間はこのタイムを参考に割り出そう。マンガのセリフから想定した約1時間が正しいのかどうか?」

 そう言うとドクターうるふは11時8分、出光を出発した。

 出光を出て渋川駅方面へ向かう。

 車は先ほどよりも多い。渋川駅前を右折するとすぐに、渋滞に遭遇した。国道17号に出る信号から続いているようである。

 「結構あるぞ。池谷先輩はこの渋滞には遭ってないだろうな。」
 「青、短ぇなー。ほとんど行けてねェじゃねーかよ。」

 確かに。何台通過できているのか、列の中から確認することはできないが、青の時間からしてそれほど多くはなさそうである。信号を見ることができるこの位置からでも、さらに後3回ほどは掛かりそうな勢いである。

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「真子ちゅわ~ん!!」

 180SXはすぐにあの歩道橋の下を通過した。道路は比較的空いている。池谷先輩の出発した午後8時30分ごろと言うのもおそらくこの程度の車の量であったと推測される。

 駅前交差点を右折。上越線の下をくぐり、国道17号へ。道が2車線になる。
 「インター入り口までのわずかなだが、ブチ抜くぜ。」
 ドクターうるふはフルブーストで加速する。

 「ちょ、ちょ、ちょっとまって。」
 「なんだよ?!もう一台抜けるのに。」
 「池谷先輩のシルビアって、ターボ?」
 「......じゃぁないだろうなぁ......。」減速するドクターうるふ。
 「じゃぁ、ダメじゃん」
 「そ、そうだな。健二先輩じゃないもんな。いっくら急いでも過吸はしないようにしよう。」

 180SXは、渋川伊香保ICの料金所へと入っていった。パワーウィンドウの効かない180SXで器用に自動発券機からチケットを受け取るドクターうるふ。

 「ドア開けてチケット取るのって、結構難しーンだぜ。」

 「でさー、どうなん?下から行った方が早いわけ?時間的には?」

 「ふっ‥。」
 ドクターうるふは右ウィンカーを出して、追い越し車線に入る。流れについて行けない車をあっさりとパスしながら言った。
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 「一般道がもたらす最大の恩恵は安さなんかじゃなく‥目的地まで理想的な直線コースが描けることこそ生命線。高速を使う車をブチ抜くことが一般道のカタルシスなら‥、オレは一般道を行く者に脈々と流れ続けている孤高のスピリッツが好きなんだ‥。」(出典:5巻78ページ)

 「は?」

 先程までの雨は止み、路面は既にドライへと変化し始めていた。高橋兄弟ばりの高速クルーズで180SXは関越自動車道を南下する。

 「こういう時って、何kmくらい出すかな。池谷先輩なら。」

 「わからないな。でも、オレならリミッターまで出すね。そうでないとダメだったとき、後悔することになる。だけど、常にリミッターじゃぁ、走れないだろうからな、物理的に。平均で言ったら、このくらいじゃないのかな。」

 そう言うドクターうるふのスピードメーターは1○0km/hを指していた。

 高崎JCTを過ぎたのは11時31分。23分が経過している。この先が藤岡JCTとなる。
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「真子ちゅわ~ん!!」

 「何、なりきってんの」
 「やっぱ、なりきらないと。そのときの池谷先輩の気持ち作んないとさ。オレはそのときの走りはできないと思う。」

 「結構早くない?高速。」
 「それを言われるとつらいぜ。実はオレもそう思っていたところなんだ。だが、ここからは結構かかると思うんだがな。」

 上信越自動車道は藤岡ICを経由するため、目的地の松井田妙義へ行くまでにかなり南まで行ってしまう上に、下仁田をも経由する。どう見ても効率のよいルートとは言えないのだ。ドクターうるふは、そこに賭けている。
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 だが、確かに予想以上に早く着きそうなことは否めなかった。Navin'youでのルート検索結果は出発地をあの出光に設定して再検索すると1時間1分。実際はもう少しかかるかと思っていたのだが。

 「このまま行くと1時間は、切るな。」

 再び降り出した雨の中、ドクターうるふはなおも池谷先輩になりきって、高速走行を維持している。180SXが跳ね上げた水しぶきは高々と舞い上がり、空を覆う雨雲と同化して行った。

 車は甘楽PAに差し掛かった。ドクターうるふは減速する。

 「何?着く時間を遅くしようってワケ?」
 「そうじゃぁない。甘楽PAの入り口と出口の間にオービスがあるんだよ(1999年当時。現在は撤去されているようだ)。この速度で行ったらさすがにヤバイからな。」

 サンバイザーも下げ、万一の場合には顔が写らないようにするドクターうるふ。念には念を入れている。

 「自動速度取締機設置路線の青い看板があっただろ。最初1枚出て、1kmくらい走るともう一枚出て来るんだよ。そうするとそこから1kmくらいのところにオービスがあるわけ。東名高速など、一部そうでないところもあるけど、たいていこのルールで設置されてるようだ。基本パターンとして覚えておけば、初めての場所でもオービスに引っかかる確率はぐんと下がるぞ。」

 甘楽PAを過ぎたのは11時44分だった。渋川を出てから36分が経過している。

 ドクターうるふは、アクセルを抜きたいというもう一人の自分を必死で押し殺していた。このコースにかかった時間が基本タイムとなり、次に走る一般道はそれを超える速さで走らなければ、池谷先輩が真子ちゃんに会えることはない。この実験を成功させたいのなら、今、遅く走れば良いのだ。先程ゆみごん社長が「着く時間を遅くしようってワケ?」と聞いたのは、そう言う意味がある。

 が、もちろんそれはできない。ゲリラ実験室の精神がドクターうるふのアクセルを踏む足を弱めさせなかった。たとえ実験に失敗しようとも、すべてを事実として公表する- これがゲリラ実験室の基本理念である。自らの推測を立証させるために、真実を曲げることは許されないのだ。

 雨は止み、路面も徐々にドライへと変わっていった。時間によって降ったり止んだりを繰り返しているのか、それとも場所によってなのか。いずれにしても日本列島に近づきつつある台風11号の影響であることは間違いない。ドライ路面とウェット路面を速いテンポで繰り返すドライブとなった。

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「妙義、どれかな。」

 妙義山にかなり近づいてはいるはずだが、どの山も雲に覆われてその姿を見ることができない。神々しい奇岩ひしめく妙義山は松井田妙義ICが近づいたことを実感させてくれるのだが、今日は事務的な標識だけを頼りにその感覚を味わうしかないようだ。

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「松井田妙義だ。下りるぞ。」

 最後の最後まで追い越し車線を走行し、ギリギリで左車線に入るドクターうるふ。そのままの流れで走行車線を突っ切り、減速車線へと入ってゆく。ほとんど誰も走っていないから良いようなものの、他車がいたら決して安全とは言えない走行である。

 「真子ちゃんが待ってるんなら、このくらいやるだろ。」

 無論、減速車線で40km/hに落とすことなどない。料金所ギリギリまで高速走行を維持する。

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 領収書を受け取るのと同じにダッシュ。が、下りてすぐの信号にかかる。急いでいるときの信号ほどもどかしいものはない。池谷先輩もこの気持ちを何度となく味わいながら、この道を走って来たに違いない。

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 青になるや否や、スタートする。右に曲がって、右手に上信越自動車道を見ながら、坂を下りてゆく。真子ちゃんの待つおぎのや駐車場までは信号にかからなければあと5~6分と言ったところだろう。

 180SXは国道18号に出る信号(交差点名:五料)にかかり、その後は車の列の最後尾を遅いペースで走った。先程までの高速走行のペースが体に染み付いており、時速60kmで走っていても遅く、じれったく、まどろっこしく感じる。

 「真子ちゃ~ん!」

 叫んでみるが、状況に変化は見られない。おぎのや直前の信号にもしっかり引っかかり、到着したのは12時5分。所要時間は57分であった。

 「とはいえ、思ったより早かったな。池谷先輩の言う『1時間以上』ってのはちょっと多めに言ったのか。夏とはいえ、夜の9時近い時間で、上信越道を長野方面に行く車ってあまり多くないだろうから、ま、事故渋滞つっても15分か20分だろうな。」

 「っていうと1時間15分程度が池谷先輩のかかった時間って想定できるワケね。」
 「予想では、な。」

 ドクターうるふは、即座にエンジンを再スタートさせた。
 「よし、戻るぞ。今度は一般道だ。」




【なぜ、高速?】

 ドクターうるふとゆみごん社長は渋川まで戻る間、そもそも池谷先輩はなぜ、迷いもせずに高速道路を使ったのかと言うことに関して議論していた。

 「やっぱ、間違いないからだろう。池谷先輩は始めっから真子ちゃんとの待ち合わせ場所に行く気がなかったから、一般道で行く下調べなんてまったくしていなかったんだろうな。そこへ店長にいきなり言われて予定外に行くことになったわけだ。池谷先輩の頭にも『一般道で行った方が......』という考えは浮かんだとしても、一般道は結構難しい。だからその賭けには出られなかったんだろうな。確実に着ける高速を選んだんだろう。」

 「渋滞の危険性はあるけれど、迷っちゃったらサイアクだもんねェ......。」

 が、ドクターうるふはストーリー性を逸脱した、現実的な面も指摘する。つまり、読者へのインパクトである。

 渋川からおぎのやまでの道すがら、池谷先輩は真子ちゃんへの思いをより一層強めて行くシーンがある。店長に指摘されたアドバイスを元に今までの真子ちゃんの池谷に対する態度を洗いなおし、自分の至らなさを悔やむシーンだ。

 この背景として書くのであれば、やはり高速道路の方が親しみやすい。出てくる地名は有名で、位置関係がわかる読者も多かろう。

 「天使を地上からつれ去らないでくれ‥」
 とか言っている背景に「榛東」や「箕郷」の地名があっても、ほとんどの読者はその位置関係を正確に知る事ができず、臨場感に浸ることができないだろう。しげの秀一にはそう言う不安があったのではないか。

 現に、中里と啓介のバトルをギャラリーしに行く際、拓海とイツキは一般道を通って妙義まで行っているが、その際のシーンはほとんど景色が紹介されずに終わってしまっている。この辺りの景色を描いても、共感を持てる読者は少ないと判断したのだろう。

 また、レッドサンズの連中が遠征するにもほとんど高速が使用されている。前橋から妙義など、確かに高速の方が早いだろうが、普通なら一般道で行く距離である。とくに『タイヤが減らない雨の日は朝まで走っている』というケンタなどは絶対に一般道から行くべきなのだ。
 にもかかわらず、高速道路を使うと言うのはやはりしげの秀一のこうした意図がこめられていることは否めない。

 「言えてるかも知れないなぁ。」
 「だからさ。池谷先輩が高速を使ったのは、純粋にストーリー上の問題だけではないかもしれないってことさ。」


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