ゲリラ実験室 MISSION3 Page4


 餅はうまく焼けることが判明した。しかし、これだけでは満足しない。先ほど失敗した焼き芋を成功させてやろう、そう決めて、芋を装着していたその時。

爆音と共にレトロなスポーツカーが180SXの脇を通りすぎ、停車した。

「車壊れちゃったの?見てあげるよ!」

 これには肝をつぶした。「実は遮熱板で焼きイモ作ってんです」なんて言えるわけがない。

 車種は不明だが、真っ赤な6、70年代あたりと思われる2人乗りスポーツカー。幌の屋根である。オープンになるのだろう。年の頃は40~50歳くらいで、完全に趣味に生きているイイ感じの渋さがあるオヤジだ。隣には奥様と思われる女性が。

 あの車を走らせているのだから、ガレージでも持ってて、エンジンのオーバーホールくらい自分でやっちゃうんだろう。ボンネットを開けて若い男女がエンジンルームを覗きこんでいる姿を見て、「スポーツカーでカッコよくデートしてたらまさかのエンジントラブル、どうやって直したらイイのかさっぱり解らない哀れなオトコ1名。ヨシ、俺が助け舟を出してやろう。」そう思ったに違いない。

 そんな彼に、この計画を説明したら、どんなリアクションが返って来るか、予想もつかない。「そんなのは車に対する冒涜だよ!」と怒鳴られるかもしれない。

 「べ、別に壊れてるわけじゃありません。どうもお騒がせして済みませんでした」と言い、降りて来ないようにと祈った。幸い彼は、「あ、そうなの」といって、再び爆音を響かせて過ぎて行ったので安心した。今、冷静に考えてみると事実を言ってみても面白かったかもしれない。困っている人を助けてあげようとした人なんだから、絶対にイイ人だと思う。あのスポーツカーの方と、一緒に走っていたジムニーの方、あのときは言えなかったけど、僕たちは世界初の実験をしていたのです。

 再び碓氷峠。C130後ストレートの退避場にサルがいる。無視して通過してしまったが、今から思えば焼き芋の匂いをプンプンさせながら、停車してみても良かったかもしれない。エンジンルーム内の焼き芋に対し、サルたちがどんな行動を取っただろうか。

 その後もこれならホイル焼きでもグラタンでも作れそうだ、パンも焼けるかもしれないと、話が弾む。あたりはうす暗くなっていた。

 途中、エンジンルームにサツマイモが入っていることなどすっかり忘れて本庄でガソリンスタンドに入る。軽井沢に行った帰りは必ずここだ。

「窓拭いてもよろしいですか?」

 窓を拭いている店員さんは、さぞ、おかしいと思ったに違いない。なんで焼きイモの匂いがするんだろう。この車からするような気もするけど、そんな訳ないし......と。
 店員さんは平静を装っていたが、絶対に異変を感じているはずである。何しろ、本当の焼きイモ屋さんのように、あたり一面焼きイモの匂いがしているのだから。

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ラボに到着後、イモを取り出してみたが、今回も失敗であった。
芋を薄くするなどの対策を練る必要がある。

 前回同様、周囲5mmほどはうまく焼けているが、中心部には火が通っていない。やり方に問題があるのか、それとも温度か。課題は多い。

 ただ、今回の実験で、オーブンの倍ほど時間はかかるが、餅は確実に焼けると言うことが判明した。特別な技術は必要としない。途中で裏返したりもしていない。遮熱板に密着するように固定できれば、後は走るだけである。下に、おおよその焼き時間を示しておく。

通常走行(2000~3000回転) 40~50分
高速走行(3000~4000回転) 35~45分
全開走行(4000回転以上) 25~35分?

 比較的火は弱いようなので、時間にそれほど神経質にならずとも大丈夫だと思う。停車場所が近くになく、すぐに取り出せそうにない場合は、回転数を下げて火加減を調節しよう。なお、実験に使用した180SXはエンジンの排気側、すなわち、餅がセットしてあるすぐ上に放熱のための穴が開けられているので、これを考慮すると通常の180SXではこれより5分程度、早く焼けるかもしれない。

 餅の枚数に関しては余り関係ないように思える。注意して欲しいのは厚さと置き方である。厚さが2cmを超えるような餅は薄く切ったほうが良い。火が通りきらない可能性がある。なお、厚さ3cm超えるようなものはスペースの関係で設置できない。置き方は、必ず遮熱板に密着するように固定し、走行中脱落しないように注意しよう。針金を固定するのは、エンジン本体や、パイピングなどの走行中に動きのない部分にすること。アクチュエーターなどには絶対に固定したり、針金を干渉させたりしないように注意しよう。今回の実験ではエンジン本体のパイピング類と、ストラットタワーバーを固定に利用した。

 今回の実験を終えて、ドクターうるふは語る。

 「なんで、こう言う器具って言うか、装置が発売されないのかなって思うね。個人レベルの針金とアルミホイルだけで餅が焼けちゃう。メーカーが作れば湯沸かしだってパン焼き器だってなんだってできちゃうよ。湯沸しなら実用性も高いし、メーカーだったら絶対に実現させられると思う。RV車にはオプションで用意したら絶対に売れると思うよ。

 今、お湯さえあればなんでも作れちゃうんだよね。目的地に着いてさ、すぐにコーヒーでもスープでも飲める。暖かいものが常にあるって言うのはアウトドアでは本当に幸せなことなんだよ。今の時代に、絶対必要なものだと思う。

 誰か、そう言う関係の方がいたら作ってよ。「うるふの怪しいホームページ」宣伝してくれれば、このアイデア、タダで持って行って良いからさ。もしかしたら、億単位の儲けになるかもよ。

 ま、今回は餅だったけど、非常に簡単にできて、かえってレポートがつまんなくなっちゃった。それくらい簡単にできた。着いたらすぐに食べられるでしょ。手軽なんだよね。容器を改良して、装着と取り出しがもっと簡単になれば利用価値はかなり高くなると思う。焼きイモも絶対成功させて見せる。このままでは終わらないよ。」

と意欲を見せる。この排気熱利用に大きな期待を寄せているようだ。

実験は無事終了し、その結果だけを残して、研究員たちはいずこかへ去って行った。
新たな検証が、彼らを待っている。

走行中に調理して、
着いたらあったか、すぐ食べる。
2000年は新しい鏡開きでスタートしませんか。


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